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NO.139 「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない



表題は、歴史的名著「沈黙の春」を書いた海洋生物学者レイチェル・カーソンの別な著書

「センス・オブ・ワンダー」より


「センス・オブ・ワンダー」… 神秘さや不思議さに目をみはる感性 (上遠 恵子訳)

純粋無垢な子どもにはだれにも備わっているものという。


この本は、アメリカ・メイン州の海辺の小さな別荘で、幼い姪の子と一緒に過ごし、その際に共に経験した自然との触れ合いを詩的で美しい文章で綴ったものだ。


そして、この本の主なエッセンスは23ページからの文に集約されていると思うので、引用させていただく。


 ---子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。


 もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。


 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。


 妖精の力にたよらないで、生まれつきそなわっている子どもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。

          -中略-

 わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。


 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです……。


 子どもと一緒に感激し、感動を分かち合う大人…。私達保育者にとって常に忘れてはならない原点がこの本には存在している。そして、現代の子ども達を救うキーワードとも言えるこの文章を、半世紀以上も前に記したカーソン女史に、あらためて深い敬意を抱かざるをえない。


*「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン 著  上遠 恵子 訳   森本 二太郎 写真  新潮社 刊

(現在この版は絶版となり、新しい文庫版が同じく新潮社より刊行されています)

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