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NO.141 うんどうとからだ

十月になります。

これだけ暑い日が続くと、爽秋という言葉はどこに行ったのかという気さえいたしますが、十月でも真夏日というのはごめんこうむりたいと思っています。

さて、秋と言えば運動会。幼児はもちろん、大人にとっても、運動は健康を維持するうえで不可欠なことです。

山梨大学の中村和彦教授(教育学部長)によれば、現代の5歳児の運動発達段階は、25年前の3歳児と同じ。小学3・4年生は25年前の5歳児と同じだそうです。

昔の子どもたちは、放課後沢山遊び、お腹が空き、ごはんをたっぷり食べて、ぐっすり寝ていました。そして朝は気持ちよく起き、しっかり朝食をとり、徒歩で学校へ通い…を繰り返していました。今はどうでしょう。何かと便利・お手軽になったおかげで、運動はおろか子どもたちの食も乱れ、睡眠もおかしくなっています。朝食はろくにとらないけれど、お菓子や夜食はたっぷり。スマホ・ゲームのしすぎでなんだか疲れているけれど、体は動かしていないから眠くならないなど…。 

うちの子はサッカークラブに入っているから大丈夫。うちの子はスイミングに通っているし……。

実は、幼少期は単一の運動ではなく、できるだけ多様な動きを経験させた方が良いという研究結果も出ています。そのため、アメリカでは子どものスポーツクラブは3種以上の種目が経験できないとスポーツクラブとして認定しない州が十以上あるそうです。やはり子どもが小さいほど、屋外で楽しく遊ばせ、単一の種目ではない多様な動きを経験させる方が得策なのでしょう。

先述の運動能力低下の原因は、投げる・走る・跳ぶ・登るといった基本的動作の未習得が根幹にあり、主な運動経験の不足がこちらを招いていると思われます。特に現在は、屋外遊びや運動の機会の減少が懸念されますが、子どもの健全な発育・発達にとっては不利益なことです。さらに運動能力は危機回避能力にも通じていて、各地の園・学校では「転んだ時に手が出ず顔面を怪我する」「低い段差から飛び降りただけで骨折した」等の報告が来ているようです。

「経験は最大の教師」と申します。「危ないから経験させない」のではなく、大人が安全を確保した上で、見守りながら様々な運動経験・体験をさせていくことが、その子の人生を長期的に見渡した場合、益となるのではないでしょうか。また、子どもの頃の「運動が楽しかった」という経験は成人後も運動の習慣をもつことに役立ち、生活習慣病の予防・メンタルの安定等にも役立つようです。やはり幼児期の運動・外遊びのもつ役割はそうした意味からも、とても重要なものと思われます。

運動会では、三・四・五歳児のそれぞれが、各年齢に応じた演技・競技を披露してくれることでしょう。この行事を通じ「運動する楽しさ」がその子の心の奥底に残ったなら、こんなに嬉しいことはありません。

(ようちえんだより R6.10月号より)

以下は、中村和彦教授の提唱する「からだが元気になる十カ条」です。






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